偏屈ぜのさが孝

Prsented by  瑞垣 明来子/小藤花庭園
 
 

ゼノサーガ エピソードI  〜 力への意志 〜

ゼノサーガ エピソードII  〜 善悪の彼岸 〜

このサイトは、《ゼノサーガ》を応援する[小藤花庭園]の個人的趣味サイトです
ナムコ、モノリスソフトならびにエンターブレインとは、一切関係ありません
あっちゃ困るよ!! 果てしなく困るってばよ!!


1. "Xenosaga"のこれまで、現在、そして未来 2. 兄の悩み――ジン・ウヅキ氏の贅沢な懊悩
3. シオンにおけるアレンとモモの関係 4. 怪しいオニイサン、アルベドの過去
5. 引き裂かれたひとつの命/やや真面目コラム 6. サービス満載?/萌えポイント・腐女子ネタ
7. 終わりなき旅の果て/やや真面目コラム 8. ちょっとネタ/重箱すみつつき・ふたごつながり





"Xenosaga" のこれまで、現在、そして未来

《ゼノサーガ リローディッド》=エピソードI逆輸入版 が、どれぐらい日本での人気を獲得しているかわからない(声アテの違和感がない、バトルスキルや衣装なども追加されているが、声優にこだわる人はとことんこだわるので)が、2001年発売とともに話題になった《エピソードI 力への意志》に続いて、今年の《エピソードII 善悪の彼岸》発売。もっとも限定版については、何ともコメントしがたいものである……あのフィギュアを見れば、誰もが複雑な感情をいだくであろう。
 オフィシャルファンブックでは、すでに《エピソードIII》の発売もにおわせる発言があったり…そりゃ、あるだろうよ。

 ゼノサーガを購入することは、ワタシにとって冒険とも言えました。キッカケになったのは、某ネットゲームのキャラクター絵を描いてくれた方が「ゼノサーガのシオンみたいな眼鏡でいきましょうか」と発した一言でした。検索すりゃいいものを、間抜けなワタシは「ゼノサーガって何ですか?」と愚かにも尋ねてしまい、「PS2のゲームですよ」と教えていただいたのです。
 持ち前の単純な性格でずっぷりハマって数年、ついに続編も発売されるに至りました。ワタシとしては、今後のジン兄のアレやコレが気になります。少なくとも、1発キャラで終わる人ではないでしょう。《ゼノサーガ》におけるヒロインは、一見モモだったり、コスモスだったり感じられるかもしれないけれど、じつはシオン・ウヅキ。彼女はこれからも《ゼノサーガ》のヒロインであり続けるし、エピソードが進むにつれ、おのれを覆う殻を破り成長していく――そんなシオンの唯一の肉親・ジンが出てこなくなるって、あり得ないそれはゼノサーガじゃないっ!! …とか、言ってみたくなったりします。
 あくまでも、個人的な激しい、怒濤のように激しすぎる意見ですが。
 それではいざ、本題へと入りましょう。
 
 

兄の悩み――ジン・ウヅキ氏の贅沢な懊悩

 エピソードIIで登場するなり、ファン(とくにオナゴ)のハートをがっちり掴んだ、シオン・ウヅキの兄、ジン・ウヅキ。
 エピソードIでは、ラストに少しだけ登場している。確かに、黒い和服に身を包むジンは、そそるものがある(事実そそられた人、多数)。しかもロン毛に腰刀。第2ミルチアであんな格好をしているのは、果たしてジンだけであろう。この格好や、やや古めかしい言葉遣いは、彼が祖父から受け継いだものか、あるいは強烈な個性からくるものかと思われる……後者の可能性が大
 どうでもいいですが、第2ミルチアの京極堂にみえます兄さん。

「おじちゃん、その腰の、もしかして刀? ここ空港だよ。駄目だよ」
 というセリフを、ジンをバトルリーダーにしてうろついていればいただけるが、「おじちゃん」という言葉に、頭の中でしばらく反響が残るかもしれない。35歳のジンは、確かに子供から見れば「おじちゃん」と呼ばれる年齢だし、それなりの渋さも有しているが、まさかそう呼ばれるなんて考えてなかった。また、別のキャラクターをリーダーにして散策していると、「第2ミルチアで古本屋をしている、30過ぎてるのに独身の美男子」だとか「伝説の軍人」だとかいうセリフが見られる。
 ジンがこの歳になっても結婚どころか、おつき合いの「おの字」もないのは、言うまでもなくシオンの影響が大きい。やや変わり者ではあるが兄妹揃って美形なので、周りをウロチョロする輩が数人いてもおかしくないのだが、シオンはアーキタイプ・コスモス起動実験の事故で恋人ケビンを失っているし、ジンはシオンのことを考えると、自分だけさっさと腰を落ち着けることができない。シオンの時間は、一部分が14年間止まっているようなものだ(フェブロニアの言葉からも窺えるように)
 ジンはミルチア紛争の直後、軍人を退役してしまっていると思っても、さしつかえはなさそう。退役した軍人に政府はそれなりの金を払う(紛争の真実の原因が原因だけに、口止め料も含めて)し、軍人なんてやっていたせいで、たったひとりの肉親といつ離ればなれにされてしまうかわからないなんて、ジンには耐えられない。冒頭でジンはマーグリスと闘って、上司の命令とはいえ、傷を負ってなお最深部へと侵入していく(命令のためだけではない)が、それがのちにシオンにどんな不幸をもたらし、どう言われるかだなんて、当時21歳のジンは考えもしなかった。
 考えられなかったのだろう。考える余裕を作るいとまも見つけられないほど、ジンは若かったのだ。

 ナノマシンに全てをゆだねていればいい4000年後はどうだか知らないが、《ゼノサーガ》が発売された現代では、医者になるのは簡単ではない(笑)。その医者もジンは2年足らずで辞し、「趣味が高じて買うけど売らない変な古書肆」を営んでいる。ジンは軍人だったため、医療の心得は多少なりともあると思われる。祖父が剣の指導者であったところを鑑みると、ジンは、シオンより傷などの手当てが得意かもしれない――こころの傷に対しては、さてどうだか。
「兄さん、医者になったんじゃなかったの?」(シオン)
「あれ、お兄さん、医者やめたんじゃなかったっけ。シオンちゃん知らなかった?」(病院の医師)
 セリフからもわかるように、シオンは唯一の肉親である兄が、職業の鞍替えをしているのに気づかなかった。
 ほんとうに、心理的に疎遠な兄妹だ。物理的にも疎遠だろうが、メールは「うーくん」が受け取ってくれるし、出してくれる。「うーくん」がいなくても、端末なんてそこかしこにあるこの時代、どう考えても、時代錯誤なジンがメールじゃなくて書簡で出していたか、それとも筆がすすまなかったのかもしれない。それにシオンも、好んで「駄目な兄」にメールしたりしないだろう。ジンから何か個人的な通信があったとしても「あ、そう」とか、簡単にすませていそうだ。

 ジンが語るところによれば、シオンは2年前、ハタチで実家を飛び出している。
 それって単に、実家にいたらヴェクターで仕事するのが不便だから出ていったただけなんじゃないだろうか(笑/また、この回ではアレンのサプリマニアぶりがあきらかになっている。ヴェクター・インダストリー第一開発局では、レアリエン担当の三局・サイボーグ開発の一局・シオンの在籍するソフトウェアの二局問わず、かなりの不規則勤務があるということではないだろうか)
 第2ミルチアにあるヴェクター二局分室は、市街地をはさんでウヅキ家の反対側に位置している。歩いても行けそうだが、見るからにウヅキ家とヴェクター二局は離れていて、歩いて行ける距離かもしれないが、通勤がめんどくさそう。市街地はセクター1・2に分かれているが、ゲーム画面上ではイベントを盛り込んでいるためか、ほとんど住居を見かけない。目立つ施設? は、水道局だったり、ウヅキ兄妹お気に入りの『モビィディック・カフェ』、両親を失ったショックで声を失っていたルーティのいる病院やら、普通の住居と思いきや中身はとんでもない設備だったりする教授の研究室、その他もろもろ。
 
 

シオンにおける、アレンとモモの関係

 モモの事件で、アレンを三局に向かわせたシオン。
 ここでは、まだジンはバトルに参戦していない。早く二人技を水着でやらせてみたいというプレイヤーにとっては、悶絶するようなタイムラグがある。マーグリスがラビュリントスでおいでおいでと待ち受けているので、カナンに託しておいたデータのためにバトルチームから抜けてしまう前にちゃっちゃとスキルを獲得させておかないと、あとあとひどい目にあわされる。マーグリス、お前はサドなのか? と、思わず問いかけたくなってしまう。
 そんなハプニングが起きる前の、シオンとアレンのやり取り。
「アレン君、わたしのかわりに三局に行って」
「え、主任」
「モモちゃんのそばに行きたいの!!」
 アレンよりモモ――コスモスを諸事情あってやむを得ず手放してしまった彼女には、まだやる仕事はたくさんあるが、モモを放っておけない。アレンは放っておけても、モモやコスモスは放っておけない。とくにモモは機密を小さな体でたくさんかかえているし、人間と同じように感情をもっていて、家庭の複雑さで悩んだり泣いたり寂しげに微笑んだり、アルベドにイタズラされちゃったりしている。コスモスはアーキタイプの頃はあまり関わっていなかったかもしれないが、覚醒からいろいろと行動をともにするうちに、妹のように思いはじめている矢先だ。
 それでも、シオンを追ってくるアレン。ジギー顔負けの忠犬ぶり
「三局から転送しておきましたから。主任をひとりで行かせられませんよ」(アレン)
「犬っつーか、忠犬だけどな」(ジギーのモモへの態度に対して、Jr.)

 レアリエンであるモモの深層意識ダイブには、U.M.N.の設備を見ても一目瞭然だが、かなりの設備が必要だ。本社でもないのによくキーボードを素早くいじることができるアレンは、置いてこなかったほうが正解かもしれない。専門違いだが、ハマーの隣に座っているのが似合っているような気がする(苦笑)
 とくにモモは汎用レアリエン百式のプロトタイプであり、ヨアキム・ミズラヒの唯一の忘れ形見でもあり、また、サクラ・ミズラヒをベースとした疑似人格(他の百式にはない人格)を埋め込まれた、レアリエンの中でも特種な部類に属するのに加え、トップシークレット『Y資料』を所持しているためでもあるだろう。
 その『Y資料』にかけられた強固なプロテクトは、モモを「ペシェ(桃)」と呼んで可愛がる(?)怪しいオニイサン・アルベドによって仕掛けられたトラップにより破壊され暴走し、トップシークレットは、それによって流出してしまう。どこからどこまで、誰のもとに流出したかまでは全部ハッキリとしていないが、真っ先にアルベドのところへ行ったとは思われるY資料。
 アルベドに胸に手を突っ込まれるなど、前回に続き、どこまでも不運なモモである。そこがまた、可愛さを引き立てている要素なのかもしれないが……シオンにちっとも相手にされないアレンは不運ではないのかといえば、少しどうでもよかったりする。仕事姿はヘマさえしなければカッコイイ顔立ちになる彼だが、そうなったら面白みがなくなってしまうというものだ。
 
 

怪しいオニイサン、アルベドの過去

 ルベド(Jr.)、アルベド、ニグレド(ガイナン・クーカイ/12歳のガイナンは以降“ニグレド”と表記する)の過去は、Jr.達のモモ深層意識ダイブによってあきらかになっていく。Jr.の回想のなかで、故人となったモモ姉・サクラは活き活きと動いており、脳の気質障害で、母親ユリ、父親ヨアキムさえ捕らえることのできなかった表情や仕種を、Jr.達に見せている。
「あなたには、ふたりの娘がいたと思うことはできないか」
「わざと冷たくして、あとで傷つくのはアンタだよ。ユリさん」
 ジギーの提案や、Jr.のやや辛辣な意見で、次第にユリに「あなたもわたしの娘」と認められていくモモは、サクラを知ることができる。両親でさえ認識することの不可能だった、サクラのほんとうの姿を――それは、モモの奥底に眠るサクラのかけらのせいだけでは、ないだろう。モモを助けようとして深層意識にダイブする人がいなければ、決して見られないで、Jr.の記憶にだけ封じられていたサクラの姿、姉の生前の姿をまのあたりにできたのは、モモがそれだけまわりの人間に愛されているという証拠でもあった。

 回想には、当時のアルベド、ニグレドたちも登場する。ルベドは今と変わらず兄貴肌だし、大きくなったニグレド(ガイナン)はもしかしてJr.に操られてるんじゃないだろうかと思うくらい落ち着いているし(しかし、Jr.とは違う妙な頑固さの存在も、ファウンデーションの住人の言葉から、ちらほら窺える)、アルベドに至っては、誰だお前は!! 状態だ。
「怖いよ、ルベド。手を離さないで」(精神リンク形成のとき。おびえるアルベド)
「いやだぁ。ルベドが死んだら、僕も死ぬぅ」(ピストルで頭を撃ち抜き、再生した直後のアルベド)
 そう叫んで涙を流すアルベドの顔は、あどけない12歳の少年のものというには、あまりにも幼く心弱い者のみせる表情だ。
「自分が死ねないとわかってから、アルベドは変わっていった」
「この痛み――アルベドの」
 深層意識でのバトルののち、アルベドが消滅していく痛みをJr.は感じる。ここで忘れず『サイコポケット』でレアアイテムを手に入れているワタシは、血も涙も何ですかソレは な、かなりの鬼だ。右胸の痛みだけを残して、消えていくアルベド。やがて、ガイナンにも変調がおとずれる。ガイナンは、父親であるユーリエフ博士に意識を乗っ取られてしまった。どこまでもはた迷惑なオヤジだ。もう死んでるんだからとっとと成仏してしまえ と思ったのは、ワタシだけではないと言い切られる。
 博士のつぶやきは、ニグレドの過去をあばいた。
「もっとも、わたしを殺した息子だが」
 ユーリエフ・インスティテュートで育った、同じ受精卵から生まれた3人、そしてU.R.T.V.の個体たち。個体たちに特定の名前はなく(実際はあるのかもしれないが、それぞれは手のひらに刻まれたシリアルナンバーで認識されている。また、個性というものを持てないほど自我が薄弱なため、名前をつけても意味がないと判断されたのかもしれない)、ニグレド、ルベド、アルベド、ちらっと出てくる女性型のシトリンだけに、現在は名前というものが確認されている。
 シトリンという女の子は、その名のとおり、宝石のような色合いの瞳と髪の毛をしている。
 しかし、その後、シトリンも死亡しれたと思われる。
「アルベドがお墓をつくっていた。シトリンは怒るかもしれないけど、ここにあの子のお墓をつくろう…」
 
 

引き裂かれたひとつの命 ■ 厳しいかもしんない真面目コラム

 まれに、結合双生児という存在が生まれることがある。何らかの作用で細胞の分化がうまくいかず、互いの体の一部分が融合している状態で育つことをさす。語るまでもない顕著な例は、ベトナム戦争の枯葉剤における被害による結合双生児、そしてこの子らは、日本でも存在のケースがある(2003年)。そのメカニズムは、いまだもって解明されていない。
 ベトナムと日本での医療水準は、言及するまでもなく桁外れに違う。ベトナムでも大きい医療施設ならまだしも、周産期医療というものがまだ確立されていない地方は言わずもがな。また、この周産期医療も日本では「充実している」とは言いがたく、そのため、医師の勝手な都合で陣痛誘発剤を使われたりする悲劇があとをたたないこと、検診をおこたったがために我が子と自分の命を危険にさらす未熟な母親とも呼べぬ女性が存在することも、また事実である。

 女性は1度、総合病院の婦人科を訪れてみればおわかりかと思うが、人口密集地域の病院の産婦人科には、かなりの設備が整えられている。現代では、色のついたエコー検査画面まである(心臓に色がつく)。何かしらの悩みをかかえる女性には、その原因を突き止めるためにさまざまな検査がなされるが、その検査で機械を目にするチャンスは、いくらでもある。超音波の装置がどのようにして生み出されたかまで知るチャンスは少なくても、だ。
 お産をひかえたら定期検診を受けるわけだが、いくつかの検査で胎児に異常が発見されることは、珍しくなくなってきた。羊水が少ない・多い、超音波での画像の乱れ、血圧の変化などだが、なかでも、羊水と超音波に異常があるときは、胎児にも異常が生じている場合が間々ある。胎児の異常は遺伝子レベル、服薬、病気などといったハッキリしないものからあきらかなものまで原因はさまざまだが、不妊治療目的による体外受精卵長期培養のケースが発見されている。なお、この胎児は結合双生児で、調べた限りでは複数の臓器に障害があり、母胎外では生きていけないことが判明し、中絶手術で死亡している。新聞ではこれを取り上げ記事にしていたため、どのような異常が亡くなった双子に存在したか個人では把握しているが、ここで詳細を述べることはあえて避ける。

 ルベドとアルベドは、28週まで体の一部が結合していた。それは、遺伝子をいじる禁忌がなした運命だったかもしれない。そこまで記憶するのは人体の限界で不可能だが、知らされたか、あるいは自分から知りたいと欲することによって、子供は自分のことを知る権利を得る――「知らされた」場合には「知りたくなかった」と拒む権利は哀しいことに用意されていないが、生体兵器として生み出されたこの双子がどこまで「ヒト」として扱われたかは謎だ
 他の個体にはない特徴が顕著であったとはいえ、そういう視点でしかものを見ない人には『やたら突出した生体兵器の突然変異』としか感じられないし、サクラのようにこの子たちを「生体兵器ではない生命」として認識できる視点をもっていれば、シオンたちのように『数奇な運命をもつ兄弟』と思うこともできる。
「俺たちはちょっと特別だった」
 ユーリエフ・インスティテュートで生まれた結合双生児は、ルベドとアルベドだけ。他の個体と違う特徴をもつニグレドは、オリジナルの受精卵が同一であるため、外見はそっくりだが、黒瞳黒髪の別個体として生まれてきている。また、性染色体がXXであるシトリンも、オリジナルは同一なので顔立ちはとてもよく似ているが、強い個性を持っている(いわく「生意気」、お高くとまった女の子の性格が出ている)
 彼らは対ウ・ドゥ用につくられた生体兵器と言われているが、人類が踏み込んではならない領域が、ここにも存在する。
 人類は、神にはなれないのだ。決して。
 
 

サービス満載?

「いい匂いだ、ルベド」
 ブホッゲフッゴフッゲヘガハッ!!(ワタシの咳き込み)
「ぶっ殺してやる、てめぇ――」

 モモの深層意識での、アルベドとJr.の再会? シーン。
 見ようによっては、アルベドがJr.を後ろから抱きすくめて、頭にチューしてるような感じに見える。これは狙ってるのだろうかと疑問を感じるような1コマ。いうまでもなく、プレイ中にふきだしてしまった。断言できるのは、このムービーが腐女子と呼ばれる方々の心臓を発作的に直撃したということだけだ。暴れるJr.を後ろから、足が地面につかないほど抱きあげて、赤い髪の毛に顔をうずめるアルベドは、とてもとても幸せそうに見える。
 前回、モモたち百式がこの怪しいオニイサンのえじきになっていた逆襲かのように、今度はいたいけな少年たち(しかもJr.が金髪碧眼になったバージョン)がぞくぞく登場し、オマケに「Jr.が大きくなったら赤いガイナンになる」と言わんばかりのニグレド登場。
 さぞ、萌えられたかと思います。
 

「兄として認めてもらえないような気がして、怖いんです」
 夜のウヅキ家縁側で、ケイオスと会話するジン。「あまり近づき過ぎると、シオンに兄として認めてもらえなくなるのでは」と、長年かかえてきた苦悩を打ち明ける。「眠れない夜には…」とも言っているあたり、ジンも過去のことでいろいろと悩める夜が絶えなかった模様だ。医者を辞めてしまうぐらい、ナノマシンやサプリより、話し相手を求めているジン。マーグリスのこと、マーグリスと祖父の確執のこと、そして両親のことでジンを責め立てるシオンのこと――マーグリスのことは、悩んでいるというより「怒っている」というほうが正しい感情をもっていることも、ラビュリントスでのバトルであきらかになる。
 そりゃ、自分の祖父をああも罵倒されれば、殺すぐらい憎んでいない限りは、孫として人間として怒りをおぼえるだろう。それに、マーグリスが今までやってきたことを考えると、人間として赦しがたいものがある。どこまでも憎まれていく男・マーグリスである。

 ミルチア紛争までのジンとシオンがどうだったか、つまびらかに描かれてはいないけれど、13離れた兄妹だと、ケンカしたこともほとんどない…というより、皆無なのでは。シオンがいちばん難しい時期(思春期)に両親を亡くしているだけあって、保護者として兄として、また、死んだ両親の息子として何をなせば良かったのか、そんな懊悩が去来したことも数度ではないだろう。形ばかりの墓をつくってみたものの、シオンは「いい加減にしてよ兄さん」と怒るし(シオンも過去をほじくり返したくないだろうが、ケビンを思い出しているあたり、どうも過去にとらわれるのは兄ともどもウヅキ家の血か)、シオンだって好きで怒っているわけではないことぐらいわかっていなければ、兄の役目はつとまらない
 年齢が離れているきょうだいは、ほとんどケンカというものをしない。Jr.は性格が性格なのでそれに該当しないが(笑)、ガイナン、ジギー、ケイオスあたりは、歳が近くてもケンカにほとんどならない――それ以前に、ジギーの実年齢って…ケイオスも、お茶を頼めばコーヒーとかジュースより「じゃあ、おうすで」とか言いそうだ。
「はるかに老成されているような」
 と、ジンもケイオスを表現している。ケイオスはミルチア紛争から14年経っても、姿がほとんど変わっていない。カナンはレアリエンなので、ジギーみたいに何年もそのままの姿でも理解できるが、ケイオスはいったいどういう理屈で外見がそのままだったり、カナンの乗るA.W.M.S.に乗って平気でいられたりしたのだろうか?(バトルでは、シオン、ジンが乗っても平気だが、メインコクピットに座ることは不可能)

 なお、前回のケイオスが幼いと思うのは、キャラクターデザインの影響
 モモも前回のほうが幼いし、シオンもコスモスも眼の比率と顔立ちで、より幼く見える。個人的には、前回のほうがモモはハアハアするぐらい可愛いし、コスプレまがいの変身だってしてくれる(コスチュームの変更でパンツが見えなくなったと落胆したら「お前は変態か」というご意見をいただいた)。ケイオスもシオン(眼鏡とミニスカート)もコスモス(ガーターベルトはどこへ消えたと言ったら以下略)も可愛いと思うのだが、それだとJr.の回想シーンで、モモがたくさんの百式にビビったようにU.R.T.V.にビビることになるし、何よりこれが問題だ――ジンやカナンまで幼く見えてしまうということが。マーグリスぐらいイカツければ、そうならなかっただろうが…あんなんが兄貴だったら、絶対に実家に帰りたくない。
 それこそ「駄目兄貴」と叫びたい。
 
 

終わりなき旅の果て ■ やっぱり厳しいかも真面目コラム

 アルベドに既視感を持った数ヶ月前、なんか似ている人を見たときにも、同じ既視感を抱いた。
「どっかで見たかも」
 映画《CASSHERN》のアクボーン…ふたりとも、恐怖で白髪になったのかと思ってた(アクボーンはそうだったかもしれない)ら、アルベドは違うようだ>ワタシから見れば「似ている」のであって>これも一種の悲劇か。
 

 アルベド・ピアソラという名前を発見したとき、「この名字はどこからもらってきたんだろう」と、素直に疑問を感じた。ガイナン・クーカイの名については理解できるのだが、おそらく彼の名字も誰かによって与えられたものであろう。アルベドらU.R.T.V.の存在は政府機密レベルにあり、それぐらいのレベルなら政府でなくても名字を与え、それが最初から戸籍上に存在したかのように偽造するのは、たやすいことである。

 再生を促すことができる細胞をもつということは、その再生の速度や頻度もコントロールできねばならないということでもある。再生の速度を一歩誤ると、アルベドはガン細胞をかかえて生きねばならない。ガン細胞にはアポトーシス(細胞の自死)プログラムが組み込まれていないため、異常増殖した細胞は正常なはたらきを失い、ガン=病変、異細胞 と変化してしまう。
 アルベドは、これのコントロールを生まれつきの再生促進能力とともに把握しているとみられる。
 そうでなければ、彼は大人になるまでにガンで死んでいるであろう。

 全てをナノマシンにゆだねていればいいという医学にまで発展した、第2ミルチア世代。たとえアルベドが医学に疎くても、医学の必要のない身体の持ち主になったとしても、「コントロールが一度狂えば、俺はガンに冒されるが死ねない」…そんな事実を見つけるのも、彼ならではの本能というものがあれば遠くはないことで、アルベドは、どれほどの苦痛に蝕まれても死ねないことを知っている。
「死は魂の休息――そう言ったのは、誰だったかな」(ジギー)
 ヒトは、ガンに蝕まれれば死ぬけれど、アルベドは死なない。ルベドやニグレドは死んでも、人類が滅んでレアリエンだけになっても、いつか、レアリエンさえもがいなくなっても、アルベドは運命の悪戯と表すには陳腐すぎるクジをひいたせいで、生き続けなくてはならない。細胞のひとかけらさえあれば、アルベドはどれだけ時間がかかっても、自分の肉体を取り戻してしまうのだから――
「俺を殺せよ、ルベド――さぁ」
 成長を抑制するルベドと、再生を促進するアルベド。ルベドの遺伝子があれば俺は死ねるのだろうか そんな憧憬にも似た感情をいだきながら、アルベドは広大な宇宙を彷徨い続ける。憎む相手が間違っていなくもないような気がするが、ユーリエフを憎み、嘲笑っても、それはルベドに憧れるよりもむなしいことだ。なぜなら、彼はユーリエフあっての存在でもあるのだから。ユーリエフがアルベドとルベドをつくり、またニグレドをも生み出した。ニグレドとルベド、ふたりのどちらかが欠けても、アルベドは存在できなかったのだから。

 アルベドは、ルベドに憧れを通り越して、恋をしている。別にホモだとか、そんなんヤオイじゃないの? という意味あっての表現ではなく、まさに恋い焦がれているのだ。自分の欲しかったものを全てもっているルベドは、アルベドからすれば、とてもうらやましく、狂おしいほどに憎く、そして、たまらなくいとおしい存在だ。胎児の頃に戻って、同じ夢をみて、ただルベドが大人の姿になってくれたなら。あるいは、自分もルベドと変わらない外見年齢になることができたなら…ふたりでひとつで、あれたなら。
 アルベドは、喉から手が出るほどにルベドが欲しい。ひとつに戻ったら、幸せに今度こそなれるかもしれない。自分のこころの欠けた部分を弱さを、ルベドはきっと補ってくれる。遺伝子の変異も、ルベドによってしか埋められないものであるから。しかし、どれだけ欲しても、どんな方法を使っても、現在は決して過去をすりかえられるものではないし、回想をくり返しても、いっときの充足感が消えたあと、人はそのとき孤独であれば、とほうもない寂しさに襲われる。
 これまでのことを考えると、アルベドは孤独ではなかった。彼の魂が、おのずから孤立してしまったのだ。
 それが、アルベドとルベド、ニグレドにとっての、最大の不幸だった。

 医学の禁じ手が生み出した異端児は、どこまで旅を続けるのだろうか――
 おそらく、最もいとしい者によってもたらされる安息が、その身におとずれる瞬間まで。
 真実を求め続けるシオンの旅が終わるなら、果てなき命を生き続けるアルベドの旅も、そのとき終わるであろう。
 

 ラストで、Jr.はどこからか一匹の犬を拾ってきた。局所事象変移空間とともに、宇宙に風船よろしくプカプカ浮かんでいたのだろうか。ちょっと不細工だけど愛嬌のある顔立ちをした人なつこそうな犬は、真っ白な体毛と紫の瞳をもっていた。いわく、アルビノ(遺伝子の異常による色素欠除)なのでこのような色合いの犬であるようだ。
 メリィとシェリィに許可をもらって、Jr.はその犬を飼うことにした。
 彼はいったい、このワンコにどんな名前をつけるのだろうか。
「アルベド!」
 きっと、そう呼びたくなる。ガイナンは、苦笑いするだろう。
 
 

ちょっとネタ □ ふたごつながりその他

吉田秋生《YASHA 夜叉》
クローン双子の共鳴、対立をえがいている。

篠原千絵《海の闇、月の影》
善と悪に引き離された双子の物語。ここでも不思議な共鳴がみられる。

氷室冴子《銀の海 金の大地》
哀しい運命に翻弄され続ける、双子姫の物語。
これにおける共鳴の不思議さは、互いがもつ能力(超能力)によるものだが…

吉田直《トリニティ・ブラッド》
異端審問官登場。尤も、マーグリスみたいな変なのではない。

一般性相対性理論(アインシュタイン他、物理学)
「同一の存在は、脳共鳴による崩壊によってあり得ないものである」
生まれ育ちが同じであっても、「全く同一」の存在はない ということ。

ヒーラ細胞(医学)
同名の女性から採取された、乳ガン細胞。
女性は死亡しているが、細胞は生き続けている。栄養さえあれば、宿主なしに生き続けることができるのだ。

カバラ(宗教)
色々用語がでてきます。エヴァンゲリオンが好きな人は、生命の樹など一度は見ているはず。
カバラの聖典は《ゾハル(光輝)の書》

西洋魔術・幻想文学(宗教・文学・思想)
古いめの薔薇十字からたどっていくと、「グノーシス主義」などに触れることができる。
また「異端審問(魔女狩り)」も、マーグリスの属する移民船団独自思考から、ルベドら変異体排斥につながる。

澁澤龍彦(作家・翻訳家)
魔術ならびに異端宗教、幻想文学各種取り揃え。ご一読あれ。
 
 
 

+ 文責 瑞垣 明来子(小藤花庭園)+
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